本研究の目的は、核・生物・化学セキュリティの問題を国際法の規範的・制度的観点から考察し、汎用物質の平和利用確保のための規律メカニズムの特徴と課題を明らかにすることにある。 今年度は研究の立ち上げ期として、基礎的・背景的な参考文献および資料の特定と収集を行い、またそれぞれの法的枠組みにおける取り組みの現状について予備的な分析を試みた。 核セキュリティ:2010年4月に核セキュリティ・サミットが開催され、国際社会における取り組みは新たな段階に入った。当該サミットの合意事項について、一次資料を収集することや政府関係者の見解を聴取することなどを通じてその背景や今後の実施状況などを予備的に考察した。 生物セキュリティ:これまで生物兵器禁止条約の枠組みで行われている取り組みについて検討を行った。また、国内で開催された各種シンポジウムに出席し、生物セキュリティの課題について研究者や実務家と意見交換を行った。 化学セキュリティ:化学兵器禁止機関によってようやく議論がはじめられた段階であり、関連する一次資料の収集に努めた。また、議論の方向性を見極めるべく化学兵器禁止機関の各種会合に出席して関係者と意見交換を行った。 以上の作業の結果として、検討の対象となる法的枠組みのそれぞれについて、問題の背景や規範化・制度化の状況が一定の程度明らかになった。本研究の遂行のためにはさらなる分析が必要であり、このために引き続き関連する文献・資料を収集すること、政府関係者等との違憲交換を行うこと、関連施設を視察することの有用性が認識された。
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