本研究では、一国の領域内で生じた事案について他の国が刑事管轄権を行使する際の制約要因を分析した。一国の領域内での捜査や逮捕は領域国のみが行いうることから、問題となる事案に対して領域国が自ら権限を実効的に行使している限りは、他の国には権限行使の必要は生じないし、いずれにせよ領域国の協力なくして実効的に管轄権を行使することはできない。これを踏まえ、他国の権限行使の必要を生じさせるような領域国の管轄権行使の欠如をどのように特定しうるか、その際に権限行使の実効性を確保するための条件とは何かについて分析した。
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