本研究は、独占禁止法政策において、経済学の理論分析・実証的手法と法的判断基準とが適切な距離感を保って法政策を共に改善していくためにはどうすればよいかを、個々人の法的推論メカニズムにまで立ち入って明らかにした。我々は与えられた情報に曖昧さを感じるほど、その情報を理解するために分析理論を必要とする。実証的手法の理論的曖昧さを吟味すると共に、伝統的に経験則とされてきた知見を自明視することなく、法的判断基準が最新の経験的知見に根拠を持つように常に努力しなければならない。経済学と法学との対話を阻害するような、どちらかの立場に偏った言葉を使うべきではないとして、独占禁止法の目的論についても提言を行った。
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