本科研費の研究目的である米国のLittle FTC法は、日本の独禁法の「不公正な取引方法」とその規制内容が重なる部分があるとされる。また、フランチャイズ(FC)規制に一役買っていることもある。そこで、引き続き、日・米の比較法を行うための準備作業の意味も込めて、日本の独禁法の不公正な取引方法によるFCシステムの規制、および、FC規制に用いられることが多い類型の不公正な取引方法(再販売価格維持行為、拘束条件付取引、優越的地位の濫用)に関する研究を行った。例えば、近年、原告であるFC加盟者が、詳細に優越的地位の濫用に係る主張・立証を行う事例が増加しつつある。FC契約は、店舗経営で生じた利益を本部と加盟者で分配するシステムであり、常に利益相反関係が内在している以上、加盟者自身の利益と負担の比較という観点のほかに、本部と加盟者の利益・負担分配の公正性という観点が欠かせないはずであるが、現状の裁判ではその点が軽視されがちである。 また、日弁連と合同で、米国(連邦取引委員会、弁護士、アメリカ加盟店協会(American Franchisee Association))、および韓国(公正取引委員会、公正取引調整院、弁護士)にてヒアリングを行った。米国では、FC契約の際の欺瞞的な売上予測に関する詳細な議論(平均売上の提示や地域的差異(気温、人口等)を考慮しない売上予測をめぐる問題)、FC本部側弁護士から見たFC規制法の重要性(問題解決へ向けての道程が示される)、法改正をめぐるロビー活動の実態等について調査を行った。韓国では、韓国FC法の特徴的な内容(加盟金預託制度、自動更新制度等)と、調整院における裁判外のFC紛争処理制度の実態を調査した。以上を通じて、法的規制のみならず、紛争処理の在り方をも含めて、日本でいかなるFC規制制度を構築すべきかについて大いなる示唆を得ることができた。
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