平成22年度は、日本の医療・医療保障制度改革の現在の到達点の検討を目標とした。そこで、特に、第5次医療法改正を含め、そこに至るまでの改正の経緯の中で、医療に従事する「人」(なかでも勤務医)をどのように考慮して来たか、ということを中心に検討した。現在の医療の問題を象徴している「医師不足」や、勤務医の直面している「過重労働」の実態から明らかなように、医療提供体制における人的資源の問題は、医療保険の財政問題や、病院・診療所など医療機関の体制整備にかかる問題とは別の、しかし医療保障のために考慮すべき重要な論点となる。 結局、この点について、これまでの改正の中で、派遣法の改正や医療法改正による「医療対策協議会」、各種事業による対応がみられるものの、実効性や中長期的な在り方として課題が多い。現在の問題状況に対応するためには、医療提供のあり方全体について抜本的な見直しが求められ、そこでは「地域医療」というものがキーになる。「地域医療」を展開していくためのプライマリケア体制、特に、かかりつけ医やGP(プライマリケア医)制度の構築、職者間の連携の推進、さらには医師の偏在を解消するためのより実効性のある地域的な配分システムの導入など、一歩踏み込んだ方策が求められる。 なお、当該研究成果は、日本社会保障法学会第58回秋季大会(於:東京経済大学)の全体シンポジウム「医療制度改革の到達点と今後の課題」の中で、報告グループの一員として報告を行い、日本社会保障法学会の学会誌に寄稿した。
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