平成23年度は、英国NHSの提供体制についての研究を行った。 1.NHSの全体像(個別機関の意義・役割や全体の中での位置付け)を明らかにすること、 2.現在の制度に至るまでの改正の経緯を根拠法令等によって明らかにすること、 を、基本的な柱として、法令、資料、文献によって研究を進める計画であり、研究の進捗状況について研究会で適宜報告を行ってきている。 イギリスNHS制度変遷の概略、NHSの全体像の大枠は把握し、比較研究の基礎資料となる論説の執筆に取り掛かっている(あわせて、研究成果の一部を『世界の医療保障』(法律文化社)(現在執筆中)にて公表予定)。また、日本型NHS構想に向けて必要な視座として、NHSの最低限生活保障的性質がどのように体現されてきているのかに着目した分析を進めた。この点については、地方におけるPCTの果たす役割や、制度全体を支える考え方(費用負担と給付の分離=受給関係の対価関係を擬制しない点)が重要な意味を持っており、日本において各種公的医療保険と生活保護の接続の点から医療へのアクセスが阻害されうる状況の克服に向けては、この点の追究が必要であることを認識した。次年度も引き続きこの点、特に、イギリスの国民保険からの移行や、なお残っている国民保険とNHSとの関係などについても明らかにし、提供体制の全容を明らかにしたい。 本年度は文献・資料収集とその読み込みが中心となり、前提となる基礎的な作業が中心となった。次年度には、本年度成果をも踏まえた論文にまとめる。
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