研究課題/領域番号 |
22730051
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
井畑 陽平 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 講師 (80467406)
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キーワード | 不公正な取引方法 / 独禁法 / 消費者保護 / 競争政策 / FTC法5条 |
研究概要 |
平成23年度は、次に掲げる2つを軸に、研究を遂行した。第1にEC(現EU。以下では、申請書と平仄を合わせてECと記述とする)およびEC加盟各国の先例のデータベース化、第2にEC競争当局担当者への取材の実施である。以下、敷行する。 1.ECおよびEC加盟各国の先例のデータベース化EC競争法にかかる先例-EC加盟各国における先例も含む-を収集した。わが国独禁法で禁止されるべき「不公正な行為」の内容を検討するにあたって、EC競争法で禁止されている市場支配的地位の濫用行為のうち、とりわけ、(消費者)搾取型の市場支配的地位の濫用行為にかかる先例を中心に収集し分析した。 2.EC独禁当局担当者への取材の実施研究代表者は、2008年3月に渡米し、FTC法5条に基づいて「不公正な行為・慣行」の禁止を担当するFTC消費者保護局の実務担当者にインタビューを行うことで、日本では得られない資料および情報収集が可能となった。そこで、EC法研究においても同様に、EC独禁当局-欧州委員会および加盟各国の競争法のエンフォースメントを担う官庁-、消費者保護を専門とする実務家、そして欧州在住の研究者に対するヒアリングを行った。具体的には、マックスプランク外国私法・国際私法研究所所長(ドイツ独占委員会前委員長)であるユルゲン・バーゼドゥ教授-研究代表者は、2008年4月に京都大学大学院学術創成研究で行われた同教授による講演の際に通訳を務めたため、面識がある-にご仲介頂き、ドイツ連邦カルテル庁・同独禁委員会担当者へのインタビューを敢行し、さらには欧州委員会主催の消費者問題に対する法的措置にかかる問題を議論するフォーラムに関連する資料の提供を受け、有益な情報に接することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採択された申請書に記載した年次計画に、おおむね適合した成果を得ているといえる。ただし、もちろん、課題もある。本研究課題で主たる研究対象とする独禁法は、「市場で競争制限する行為」を禁止する法律であるところ、近時、「市場」の画定に固執しない考え方が米国を中心に展開されていて、このような考え方を本研究課題との関係でどのように位置づけるべきなのか、今後、体系的整理を改めて行う必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、3年間の研究期間を、第一期(平成22年度)、第二期(平成23年度)、そして第三期(平成24年度)に分けて、遂行されている。各期を通じ、研究課題に関係する研究会・フォーラムへ積極的に参加してきた。とりわけ、平成23年度は、日本経済法学会において、本研究成果の一部について、全体報告を行う機会を得た。 平成24年度は、研究計画の最終年度である。ここまでの成果をまとめ、論文を公表し、それに対する意見を積極的に求める予定である。こうすることで、研究の客観的な位置づけを得て、今後の研究の方向性の適切さを担保したいと考えている。
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