本研究は、わが国独禁法が禁止すべき「不公正な行為」について、独禁法の母法国である米国FTC法5条に基づき「不公正な行為・慣行」として規律された先例とEC競争法82条に基づき規律された需要者(消費者)搾取型濫用行為にかかる先例との分析を主としながら、解明することを目的とする。 なお、本研究を遂行するに当たり、市場における自由かつ公正な競争を目指した法解釈論の提示するよう心がけた。なぜなら、「不公正」という文言には様々な意味を持たせることができるため、解釈の仕方によっては、場当たり的もしくは予見不可能な事後規制を正当化することにつながりかねないからである。 本年度は、本研究課題の最終年度に当たるため、ここまでの研究で得られた成果を部分的に論文として公表する作業について、次に掲げる2つを軸に、遂行した。第1に先例を整理・分析したデータベースの公刊、第2にここまでに得られた研究成果全般の公表である。以下、敷衍する。 まず、平成22年度(主として米国法について)および平成23年度(主として欧州法について)を通じた本研究を遂行する過程で整理・分析した先例について、適宜、解題や索引などを付した上で、データベース化する作業を進めた。 次に、本研究によって得られた成果をわが国に応用可能な形で具体化させる作業を行った。すなわち、消費者を保護するツールとしての独禁法が規律するべき「不公正な行為」の内容を明らかにする解釈論を展開し、実践的に解決が要請されている個別的課題についての考え方を提示する論文・報告書を執筆・公表することで、研究成果を広く社会に還元するための作業を進めた。なお、研究成果の一部は、井畑陽平「米国連邦取引委員会法5条にいう『不公正な行為・慣行』の近時の展開」泉水文雄ほか(編)『競争法の理論と課題』(有斐閣、2013年9月刊行予定)として、公表される。
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