2年間の成果を踏まえて、EUの間接性差別に関する分析およびパートタイム労働法における『均等待遇』『均等処遇』の分析に焦点を当てて研究活動をおこなった。EUの間接性差別関連の裁判例においては、当初より非正社員、そのなかでもパートタイム労働であることを理由とした差別的取扱いが問題とされてきた。そこでは、なにをもって間接性差別と認定するのかについては判例の基準は変遷をみせているものの、概ねパートタイム労働に対する差別的取扱いがすなわち間接性差別と認定されている。 この事実については、パートタイム労働差別ならばそれは間接性差別であると評価されるとしても、それはやはり性差別として禁止されていると評価するべきなのか、あるいは間接性差別という形をとってはいるものの性差別としての機能は果たしておらず、性差別としての外観をとりながらも実質にはパートタイム労働差別を禁止する一種の「判例法」を作り上げたと評価するべきなのかという問題が浮かび上がってくる。 この点を明らかにするためには、立法と判例を含めたEUの性差別規制全般を概観しつつ、具体的な事案における立法または判例によるルールおよびパートタイム労働に関するルールと、間接性差別の場合とのルールを比較する必要がある。 一方、イタリアの議論からは、均等待遇原則を根拠づけるうえでは組織規制と差別禁止による規制の二種類がありうること、イタリアでは組織規制による正当化の試みがなされたがそれがうまくはいかなかったこと。それは、集団的自治という別の方策による解決が可能であったこと、組織規制はファシズムを想起させるものとして忌避感が強かったことが原因であることがわかった。
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