本年度においては、「刑事手続における公正な裁判の保障について」と題する課題の研究に関する一環として、特に職務質問における停止行為をめぐる議論を取り上げて、研究を行った。職務質問における停止行為については、大きく分けて二つの問題がある。一つは、有形力行使の可否であり、もう一つは、有形力行使の許否である。とりわけ、従来、学説上、活発な議論が展開されてきたのは、前者といってよい。そこでは、有形力行使が可能であることを前提にしたうえで、そのような結論をいかにして理論的に導き出すのかが問われている。この点につき、これまでの見解を批判的に検証しながら、一定の私見を導き出すことに努めた。また、有形力行使が可能とした場合には、次に、その許否が問題となり得るが、この点、いかなる理由でどのような判断枠組みが採用されるべきなのかについて、従来の理解を批判的に検証しながら、一定の私見を得るように努めた。その成果は、横浜国際経済法学誌上において論説として公表された。そのほか、強制処分とその規律をめぐる議論を取り上げて、研究を行った。そこでは、強制処分概念の意義、およびそれを規律するものとしての強制処分法定主義の意義に関して、あらためて検討を加え、それぞれについて、新たな理解の可能性を示すように努めた。その成果は、横浜国際経済法学誌上において論説として公表された。なお、最高裁長官に対する忌避が問題となった最高裁平成23年5月31日決定について、理論的分析・検討を加え、その成果は、ジュリスト臨時増刊『平成23年度重要判例解説』において公表された。
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