本年度は、ニュージーランドにおける社会内労働の就労支援上の意義ならびに同制度が我が国の社会貢献活動に対して示唆する事項を中心に研究に従事した。 本研究では、ニュージーランドにおける社会内労働について、①当該制度の対象者の受入れ先である代理人のもとで作業に従事することが、実地における職業訓練の機会となり、より実践的な知識・技術等を学ぶことにつながること、②社会内労働の最長時間が400時間であることに加え、一部の対象者は社会内労働期間終了後にもボランティアとして代理人の下で活動に従事する場合もあり、このことが就労に必要な知識・技能を学ぶための時間の確保につながり、またボランティア活動が就労の際の評価につながる可能性があること(同国ではボランティア活動が社会的に評価される傾向にあり、ボランティア活動が社会人として働く前に実務経験を積む機会としてもとらえられているとの指摘もある)、③代理人側も、対象者の受入れにより無償による労力提供を受けるのみならず、困難と判断した場合には中途で受入れを中止することができ、また社会内労働代理人基金を用いて対象者の作業に必要な物品を購入できる等のメリットがあり、これらが代理人による対象者の受入れ及び訓練指導を促進する要素となりえること等を見出した。 また我が国における社会貢献活動への示唆として、①社会貢献活動に職業訓練的な要素を加えることについて検討すべきであること、②社会貢献活動の時間的枠組みについて柔軟に対応すべきであることを見出した。 ニュージーランドにおける社会内労働に関する調査を通じ、我が国が参考にすべき事項を指摘するに至ったことが、本研究の意義であると考える。 また本研究の重要性とは、再犯防止の観点から就労支援の重要性が指摘されている昨今の我が国において、社会貢献活動の枠組みを利用した就労支援の一方策を提示することにあると考える。
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