本年度は、触法障害者にとって適正手続たることを保障する刑事訴訟手続はどのような手続であるべきなのか、諸外国との比較をもとに、理論的・実証的に研究を行うため、基礎的な実態調査と文献等による基本的情報の収集、及び研究の中間報告にあたる学会部会報告を行った。 まず、実態調査として、オーストラリア・ビクトリア州の刑事司法制度における触法障害者支援の現状を、特に判決前調査との関係で詳細に調査を行った。裁判所や調査機関はもちろん、日本の刑事施設における障害者のための特化ユニットにあたるものの現地調査、手続段階での触法障害者支援を実施する機関のヒアリングも実施した。また、それとの対比で、日本の現状として、島根あさひ社会復帰促進センターの調査や、刑事施設ソーシャルワーカーの活動実態も検討を行った。 また、文献については、オーストラリアで触法障害者の社会復帰支援にあたり、その指針となっているTony Wardの「Good Lives Model」について書かれた著書の翻訳作業を行っており、今夏までに出版予定である。 さらに、2010年7月には、日本刑法学会関西部会において、それまでの研究状況を報告し、その場で様々な指摘を受けたことで、今後、対象を犯罪行為者一般へと拡大した研究に向けての重要な示唆を得た。
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