本研究は、「取調べ」を鍵に、日本、中国においてそれぞれの問題点を分析し、さらに取調べの録音・録画及び弁護人の立会いについての中国の試験的実施の動向について調査分析し、わが国における取調べの可視化についての立法あるいは施策における判断材料を提供することを目的とする。本年度は、取調べの録音・録画及び弁護人の立会いをめぐってなされている中国の議論を検討対象として研究を進めた。具体的には、2005年4月から11月にかけて、北京市公安局海淀支局(都市部)、河南省焦作市公安局解放支局(中部の発展地域)、甘粛省白銀市公安局白銀支局(西部の未発展地域)で試行された、警察の取調べにおける取調べの録音・録画及び弁護人立会いの試験的実施についてインタビュー調査を行い、試行の内容と検証に関する文献を入手したうえで、調査・検討する作業を行った。平成23年2月25日から3月2日にかけて、北京での調査を実施し、刑事訴訟法学者で取調べの可視化に係る研究の第一人者である樊崇文教授(中国政法大学名誉教授)に会い、中国における取調べの録音・録画及び弁護人立会いの試行における経緯、それらが刑事手続にどのような影響を及ぼすのかについて議論した。それについては、「取調べの可視化と捜査実務の変容」をテーマにした日本弁護士連合会の国際シンポジウム(広島)で報告する予定であったが、地震の影響で延期中である。次年度は、本年度の研究をさらに深め、かつ具体的な取調べの可視化の検討を展開する予定である。
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