取調べの録音・録画、弁護人の立会いに関する、東アジア諸国、中国、韓国、台湾の動向について検討を行った。 取調べの可視化の目的をめぐって、わが国では、その目的の中心として、自白の任意性をめぐる両当事者の争いに決着をつけることがあげられるが、中国、韓国、台湾における取調べの録音・録画の制度化の背景には、圧迫が生じるような取調べ実務を廃絶し、取調べを道義的にかなったものとすることが目的の中心におかれている。可視化の目的は、供述の任意性や信用性の確保というよりは、取調べの適正の確保(冤罪の防止)であることを自覚したうえで、録音・録画の具体的な制度設計がなされるべきである。 わが国の取調べの問題は、取調べが捜査官と被疑者だけの密室の空間で行われることにより、取調べにおける捜査官の行動を規制するルールが規範化されているにもかかわらず(犯罪捜査規範)、規範化されたルールが遵守されているのか否かについて、第三者が客観的に判断することができないことにある。取調べの在り方は、捜査官の裁量・経験にゆだねられており、各捜査官の理解する取調べの適法性の規準についての共通理解がなされていない。PEACEモデルという取調べ技法(手法)をもとに捜査官の教育・研修を実践している、韓国における取調べの在り方、機能の変容についてさらに検討する必要がある。本研究成果は、2012年度中に学会誌等を通じて公表される予定である。
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