研究概要 |
本年度の研究は,予定してきた研究期間の最終年度にあたることから,前年度までの研究を継続しつつも,本年度は比較法の対象及び方法論的にも異なる観点からの比較研究を行い,これまでの研究の蓄積により多角的な軸と基礎とを加えて,研究全体の成果を公表する作業を行った。すなわち,本年はフランスとの比較研究に本格的に着手し,1,合併及び法人の法学的基礎の探求を行いつつも,2,その現代的な展開をアメリカ及び日本の問題状況と付き合わせる作業を行った。 より具体的には,1,ではまず,フランスにおける合併及び法人の概念の基礎づけを行うべく,まずは(1)18世紀の委任・組合契約とその19世紀以降の展開を追い,会社の契約的な基礎と20世紀の法人論との関係につき一通りの見取り図を得る作業を行い,他方で(2)19世紀中盤以降に展開した資産の概念およびそれと営業財産の概念との関係に着目して,両者が債権者信用との関係で、諸権利による複合的な財産をどのような意味で形成し、とりわけ会社及び合併との関係でどのような基礎を形成してきたかを検討した。 次に,1,の作業を前提として,2,では,(1)前年度までに行ってきた1980年代以降のアメリカと日本における合併及び法人の問題の分析から,その問題点がより顕著に現れる日本の会社分割の局面に着目し,他方で(2)1980年代以降,フランスに現れた新たな法人利用のあり方(一人会社)と,同時期に進展した特定の会社分割の形態(部分出資)の関係に着目し,そこに1,で検討した法的基礎が果たす意義を検証する作業を行うことにより日本法の現状との比較を行った。以上の作業から,その成果を「法人・資産・会社分割」の形で上梓し(提出済み,2013年度公表予定),また,成果の一部として「商法/取引関係の法的位置づけから見た現代社会」を公表した。
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