本研究は、我が国の民事訴訟法は緩やかながらプリトライアルとトライアルとを峻別するという手続構造を採用しているという認識に基づき、そのような構造の下でのプリトライアルのあるべき規律を比較法的な知見を利用しながら明らかにすることを目的とするものである。かかる目的に照らし、本研究の初年度である本年度においては、諸外国の民事訴訟法に関する基本的な文献を収集した上で、諸外国の民事訴訟制度についての大まかな理解を獲得することと、我が国の民事訴訟法についての理解を深めることを課題として設定した。 前者の課題については、基本文献の調査を通じてかなりの程度ドイツ、アメリカ、イングランドにおける事情を明らかにした。特にイングランドの民事訴訟については、本人訴訟は滅多にないという従来の通念とは異なり、本人訴訟も無視できない程度には存在し、民事訴訟制度もこのような現実を踏まえて仕組まれる必要があると認識されていることが明らかになった。イングランドのこのような現実は、同様に一定数の本人訴訟が存在する我が国の民事訴訟を考える際にも重要な示唆を与えると思われる。もっとも、これらの調査の結果を公表する段階には至っていない。 後者の課題については、我が国の民事訴訟法の骨格をなす既判力について従前の理解はなお十分ではないという認識に基づいて再検討をする作業を行い、これに関して11.研究論文欄に掲げた第2および第3論文を公表した。また、我が国における多数当事者訴訟の現状を確認する意味で、11.研究論文欄に掲げた第1論文を公表した。
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