本研究は、我が国の民事訴訟法は緩やかながらプリトライアルとトライアルとを峻別するという手続構造を採用しているという認識に基づき、そのような構造の下でのプリトライアルのあるべき規律を比較法的な知見を利用しながら明らかにすることを目的とするものである。かかる目的に照らし、本研究の第2年度である本年度においては、前年度に引き続き、諸外国の民事訴訟法に関する基本的な文献を収集した上で、諸外国の民事訴訟制度についてのより詳細な知見を得ることと、我が国の民事訴訟法についての理解を深めることを課題として設定した。 前者の課題については、本人訴訟がどの程度存在するか、ということが、裁判所の手続への関与に対する態度に決定的な影響を有するという認識の下、本人訴訟に関する実証研究についての共同研究に関与する機会を得た。この機会に、私自身は、イングランドについて詳細な調査をした。また、他の参加者の調査から、アメリカ、ドイツ、フランスについても一定の知見を得ることができた。もっともなお、これらの知見は公表には至っていない。 後者の課題については、判決手続と密接に関連する民事執行法および民事保全法の分野について、13.研究発表欄に掲げた第1および第2論文を公表した。また、特許法平成23年改正を契機として再審の訴えの理解を改めて確認する趣旨で、13.研究発表欄に掲げた第3論文を公表した。なお、本年度には、共著の企画の中で、裁判上の自白に関する論文を執筆した。これは本研究と特に密接な関連を有するものであるが、なお公表には至っていない。また、破産法のコンメンタールの企画の一環として、否認権についての論文も執筆したが、これもなお公表には至っていない。
|