本研究は、プリトライアルに関する比較法的研究を目的とするものである。その関係での本年度の重要な成果としては、①菱田雄郷「特許法上の書類提出命令等の規定、秘密保持命令、非公開審理等」大渕哲也ほか編『専門訴訟講座(6)特許訴訟(上)』(民事法研究会)425-441頁(2012年)、②「裁判上の自白法則」新堂幸司監修『実務民事訴訟講座[第3期]第4巻』(日本評論社)77-103頁(2012年)、③「イギリスの本人訴訟」『本人訴訟の実証的研究』(司法研修所)1-16頁(2013年)がある。 ①は、特許訴訟における証拠収集と秘密保護との調整について、比較法的知見を踏まえて考察したものであり、わが国の制度が、比較法的なパースペクティヴにおいてどのように位置付けられるかを明らかにした。 ②は、裁判上の自白法則について、わが国の従来の議論を参考にしつつ、論じたものである。近時は、裁判上の自白を争点整理のための重要な手段として位置付ける傾向が強いが、そのような傾向を意識しつつ、裁判上の自白の要件および効果の両面について包括的に検討した。 ③は、イギリスの本人訴訟に関する法制度と実態を明らかにするものである。イギリスの一般民事訴訟において、原告が弁護士の代理を経ずに訴えを提起するのは稀であること、他方で、被告側では、本人訴訟も珍しくはないことを明らかにするとともに、このような現象が生じる理由および本人訴訟が司法制度に対してもたらすインパクトについて検討をした。 ①は、専門訴訟における争点整理手続のあり方に深くかかわるもの、②は争点整理手続に欠かせないツールであるところの裁判上の自白を論じるもの、③は、本人訴訟における事件管理を論じるものであり、いずれも本研究と密接にかかわる。
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