研究課題/領域番号 |
22730069
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小笠原 奈菜 山形大学, 人文学部, 講師 (40507612)
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キーワード | 民事法学 / 契約締結過程 / 契約概念 / ドイツ法 / 債権法改正 / 情報提供義務 / 説明義務 |
研究概要 |
契約当事者間の法律関係を「請求権」の観点だけではなく「契約」の観点からもとらえ直す現在の状況において、「契約」概念は重要な役割を果たしている。契約締結後の当事者間の関係における「契約」概念については数多く論じられているが、契約締結前、すなわち契約締結過程の当事者間の関係においては、「契約」概念はほとんど意識されていない。 本年度は、ドイツ法と日本法との比較研究を行った上で、フランチャイズ契約において、契約の周辺的義務としての情報提供義務の有無・内容の画定に関しては、契約交渉過程であっても契約成立後であっても、情報を提供すべき義務の有無・内容を画定する際には共通して「契約の性質」が考慮されうることについて、「フランチャイズ契約における情報提供義務と「契約の性質」」として公表した。つまり、契約締結過程においては、未だ成立しておらず交渉によって成立させようとしている契約の性質が考慮され、契約締結後においては、典型契約(あるいはその組み合わせである混合契約)としてのフランチャイズ契約の性質が考慮されうる。 さらに、本年度の4月22日に、契約締結過程における情報提供義務の法的性質を正面から判断した最高裁判決が出されたため、これについて検討し口頭報告を行った。情報提供義務の対象により法的性質が決定され、自己決定権の保護に向けられたものの場合には不法行為責任となることを示したと理解できる。契約目的達成に向けられたもの、つまり契約に付随する義務の場合や、完全性利益の保護に向けられたものの場合には債務不履行責任となると理解できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、平成23年度中に、情報提供義務に関するトラブルが多い契約類型であるフランチャイズ契約において、情報提供義務の内容が実務レベルでどのように確定されているのかに関して、研究機関の長期休暇中にドイツにて調査を行う予定であった。しかしながら、今年度中に本研究との関連性が強い最高裁判決が出されたこともあり、これを平成23年度中にこれを行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画にはなかったが、本年度の4月22日に出された、契約締結過程における情報提供義務の法的性質を正面から判断した最高裁判決から得られた示唆に基づく研究も行ったうえ、日本における現状を再確認し、問題点を抽出する。そして、ドイツでの議論、ヨーロッパ契約法の統一に関する議論を踏まえたうえで、論文執筆を行う。論文は『法政論叢(山形大学)』へ投稿する。さらに研究成果が関連分野の研究者において広く共有されるよう、「国際取引法研究会」「東北大学民法研究会」にて報告を行う。
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