平成23年度においては、まず、日本の現行法のもとで、中小企業の承継にあたってどのような点が問題であると感じられているかを、税法関係の論点を中心に検討した。次に日本法とある程度類似する民事法制を有するフランス法を素材にして、フランスにおいて中小企業承継問題についてどのような対応がなされているかの検討作業に入ったが、すべてを終えることはできず、一部の作業を平成24年度に先送りすることとなった。 フランスにおける中小企業承継問題については、次のような興味深い認識を得ることができた。すなわち、企業承継の手段として、事業会社の株ないし持分を保有することを目的とする会社(持株会社。societe holdingと呼ばれる)が広く用いられているらしい、ということである。そして、この持株会社の株の移転という形で、事業承継が行われているのである。また、持株会社を利用する際に、一定の条件が満たされていれば、税の軽減措置が得られることになっているようである。 もっとも、フランスはもともとは、法人制度に対して敵対的な法制をとっていた国である。大企業グループの場合はともかくとして、そうでない場合には持株会社の利用がされていない日本の目からすると、フランスで、事業会社の株ないし持分を保有するだけのための法人を設立するということが、中小企業についても広く行われているという事態は、いささか奇異に感じられる。平成24年度には、実務的な問題もさることながら、そのような理論体系の問題も視野に入れながら、フランスにおける持株会社の利用についてもう少し検討を深めるところから作業を始めたいと考えている。
|