本研究の目的は、「不当条項規制と事業者側のビジネスモデルの設計・価格設定の自由」との関係を解明することにあり、民法90条や消費者契約法8条~10条によって、条項の不当性を審査するにあたり、「当該契約条件が維持できないと、安価な価格での商品・サービスの提供や多くの消費者にとって有用な商品設計を阻害する」といった主張に理由はあるのか、一定の合理性があるとして、どのようなレベルで考慮されるべきなのかという問題に取り組むものである。平成22年度は、本研究に必要となる文献収集と文献の分析を行い、研究成果の一部を公表する予定であった。この目標は達成できた。具体的には、本研究テーマと直接関連する具体的トピックとして、格安航空券の販売にあたり、販売時に指定された旅程通りに利用しない場合、残部航空券が失効し、あるいは正規料金が適用されるという条項の有効性について、この問題を扱う関連資料を収集し検討した。この問題については、ドイツにおいて、現実の消費者の苦情を背景に、消費者団体による訴訟が提起され、BGH判決が出されるに至っていた。その訴訟の詳細を分析し、比較法的な考察を行い、一定の示唆を得ることができた。具体的には、航空会社が設定している上記の契約条件の価格政策的な意図を明らかにし、また、そのような政策には一定の合理性があること、しかしながら、契約条件の開示レベルで問題がある場合には、内容化を否定する可能性があり、また、目的達成の手段として条項の内容が過剰であればその部分は不当評価される余地があるといった考察を行った。次年度は、基礎的理論や他の事例についても考察を及ぼす予定である。
|