本研究課題の最終年度であった平成24年度は、「法律上の母子関係の決定とその制度に関する研究」および「母子関係確定の法的基準の要素に関する研究」を全体的にまとめ、総括を行った。 昨年度に引き続き、「法律上の母子関係の決定とその制度に関する研究」において比較法の観点から判例や学説の分析を行い、国境を越える生殖補助医療と親子関係の確定をめぐる問題について検討した。それらの結果をもとに、生殖補助医療によって生まれた子の法律上の親子関係確定やその法規制の国際的現況などについて、平成24年5月26日にお茶の水女子大学で開催されたシンポジウム(生活社会科学研究会主催)、平成24年9月8日に同大学で開催された研究会(現代民俗学会)、平成24年12月8日に慶應義塾大学で開催された研究会(生命倫理・第三世代の会)にて口頭発表をした。 「母子関係確定の法的基準の要素に関する研究」において、母子関係を決定する法的基準の要素(遺伝主義、分娩主義、意思主義)の問題に光を当てたK.M. v. E.G.判決(カリフォルニア州最高裁、2005年)を検討した。この判決を下したカリフォルニア州最高裁は、Johnson v. Calvert判決(カリフォルニア州最高裁、1993年)で採用された意思主義の適用を制限しつつ、分娩主義と遺伝主義を同時に採用し、卵子を提供した女性とその卵子提供者のパートナーである、子を分娩した女性の双方が親子関係を有すると判断した。この判決の分析を通じて、分娩主義・遺伝主義・意思主義の関連性の理解を深めた上で、論文として公表したいと考えている。
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