研究概要 |
平成23年度は,平成22年度に引き続き,主に米国における証券化市場規制について検討した。より具体的な検討内容は以下の通りである。 米国では平成22年7月における金融規制改革法(ドッド=フランク法)の成立を通じて新しい規制の大枠が示されるとともに,それを具体的なルールに落とし込むべく,SECの新しいルールが制定され始めている。平成23年度に検討したのは,それらのうちの証券化市場規制に関するもの,すなわち,証券化プロセスを改善するための規制および格付機関規制に関するものである。いずれも証券化市場の参加者のインセンティブ構造を改善するとともに,証券化市場の透明性を向上させるという観点からの規制改革が志向されているといえる。また,金融規制改革法における証券化市場規制の内容は,財務省が起草し,2009年7月に公表された投資者保護法案の内容をおおよそ引き継いでいる。ただし,投資者保護法案では,すべての格付機関にNRSROとしての登録を義務付けることが提案されていたのに対し,金融規制改革法では,かかる登録の義務付けは採用されていないといった違いもみられる。もっとも,SECのルールの少なくない部分は,提案の段階にとどまっていたり,あるいは提案すら行われていないなど,現実に制定されるまでには至っておらず,依然として流動的な要素も認められるため,引き続き立法動向に注視する必要があるといえる。 上記の検討にあたっては,立法資料に依拠するとともに,金融商品取引法・会社法の研究者のほか,経済学の研究者との意見交換も定期的に実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる内容は,米国における証券化市場規制の検討であり,その分析は順調に進んでいる。もっとも,米国の新しい規制は,いまだ完全にはその姿を明らかにしていないため,検討すべき事項は少なからず残っているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は平成24年度が最終年度であるため,米国における証券化市場規制の検討を継続するとともに,研究会等での報告,金融商品取引法・会社法の研究者や経済学の研究者との意見交換を行うことで,研究成果を取り纏めていきたい。
|