わが国の証券化市場規制をどのように構築していくべきかを明らかにするため,以下の研究を行った。まず比較法的考察として,米国の証券化市場規制の改革動向について検討を加えた。2010年ドット=フランク法を通じた改革の対象となった規制は,証券化プロセスを改善するための規制(オリジネータや証券化事業者に原資産に関するリスクの一定割合を保持させるための規制など)と格付機関規制とに大別される。本研究では,本来的には,前者が中心になるべきであるが,有効な規制の構築が困難であることから,実際には後者の規制(より具体的には,情報開示規制・利益相反規制・行政監督)が中心になっていることを明らかにしたうえで,ただ,後者の規制についても有効性に疑問があるとする批判的な検討を行った。このことは,一般化すると,商品性が複雑なものについては,本来的に市場の規律付けが働きにくく,それを情報開示規制などの規制の強化によって回復することはそう容易でないこと,さりとて,行政監督もまた機能し難いことを示唆するといえる。これらの検討の結果については,現在,公表の準備を進めているところである。 また,本研究では,上記のことをさらに掘り下げて検討するための基礎的作業として,そもそも証券市場における情報開示規制にはどのような効用が期待されるのか,そして,どのような場合に強制的な情報開示規制が必要とされるのかを検討し,その成果の一部を論文として公表した。
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