「ドイツ世話法の概要」(新井誠編『成年後見法制の展望』(日本評論社)所収)では、2009年時点におけるドイツの成年後見制度・世話法の現状を紹介した。ドイツ世話法は、1992年の施行以来すでに3回の改正を実施し(任意後見制度の活用や医療同意の強化等)、順調に利用件数を伸ばしている。ドイツでは管轄官庁の認可を受けた世話協会が成年後見人に対して助言や研修などを行っており、わが国でも成年後見人について一定の水準を確保するためは、このような方策は検討に値するものと思われる。 第41回日本公証法学会(於:関西大学)では、「ドイツにおける任意後見制度の運用」のテーマで報告を行った。ドイツでは、法定後見たる世話をできるだけ回避するため(世話人不足などの問題に対処するため)、事前配慮代理制度(わが国の任意後見制度に類似するもの)の活用が推進されているが、任意代理人による権限濫用を防止するため、一つの事務について複数の成年後見人に委任するなどの工夫がなされている。また、処理すべき事務が困難または広範である場合、あるいは任意代理人の適格性に疑いがある場合には、任意代理監督世話人が選任される場合もある。ただし、ドイツ法は、任意代理への国家の介入ついては慎重な面もある点には留意すべきである。 「『成年後見関係事件の概況』からみる成年後見制度の10年」(実践成年後見39号)では、最高裁判所事務総局家庭局が毎年公表している統計「成年後見関係事件の概況」を素材として、成年後見制度の今後の課題について検討した。近年、後見等開始手続における鑑定実施率の低下、審理期間の短縮、認容率の上昇などの傾向がみられ、これが家庭裁判所の事務量の増大に起因するものでないかが危惧される。裁判官や調査官の増員など、司法インフラのさらなる拡充が必要と思われた。
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