平成24年度は、研究計画全体の中でも、運送人の責任に関する部分および運送取引の実態調査を中心に研究を進めた。 まず、運送人の責任に関しては、商法・商行為法に関する基本書(北居=高田編『民法とつながる商法総則・商行為法』(商事法務、2013年))における「運送営業」の執筆を担当し、「分析編」において「運送人の責任体系」および「契約責任と不法行為責任」について詳しく検討した。さらに、平成24年8月から商事法務研究会において開催されている「運送法制研究会」に参加し、現行の運送法制の問題点につき研究調査を行った(「運送法制研究会」では、これまで運送人の責任等について検討が行われている)。 実態調査に関しては、平成24年10月より、法務省委託研究「運送取引に関する実態調査」に共同研究者とともに携わった。本調査では、各運送業者が行っている取引の実態を把握するため、複数の企業に対して書面調査およびヒアリング調査を実施し、最終的に報告書を執筆した。運送取引に関して、法的な側面からこのような大々的な調査が行われたことは過去に例がなく、本調査の成果は、今後の運送法制改正作業や研究活動に大きな影響を与えるものと思われる。 平成25年3月には、マックスプランク外国私法・国際私法研究所(ドイツ、ハンブルク)に赴き、「日本における運送法の改正(Reform of Transport Law in Japan)」について報告した。本報告では、わが国における運送法改正の状況、実態調査の状況をドイツの状況と対比しながら詳しく紹介した。この成果は、ドイツで発行される雑誌に掲載される予定である。 このほか、平成24年10月に開催された万国海法会(CMI)の北京国際大会に参加し、海事法の弁護士、研究者と意見交換を行った。
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