研究課題/領域番号 |
22730096
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研究機関 | 白鴎大学 |
研究代表者 |
谷本 陽一 白鴎大学, 法学部, 講師 (50515252)
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キーワード | 履行期前の履行拒絶 / 契約危殆 / 債務不履行 / 受領拒絶 / 受領遅滞 / 適切な保証を求める権利 / 再交渉義務 / 履行請求権 |
研究概要 |
1.本年度実施された研究 本年度の研究は、大別して、(1)履行拒絶と目される現象を受け容れてきた諸制度が形成する全体像の提示と(2)履行拒絶の確定性を判定するための要件または基準の抽出という二つ目標に向けて実施された。 2,研究成果 上記(1)について。関連する諸制度の分析により、履行拒絶に対応するための規定がない日本においては、履行拒絶に該当する現象の一部が応急処置として他の諸制度(受領遅滞、弁済の提供および受領拒絶)によって対応されてきたことが明らかになった。また、これを受けて、債権法改正作業において履行拒絶に対応する規定が提案されているところ、仮にその規定ができた場合、従来、これに対応してきた諸制度との関係がどうなるかについて検討を進めた(この研究成果については既に公開準備が完了している〔下記15備考を参照〕)。問題の実相を明らかにした点、今後の立法への影響を指摘する点に意義と重要性がある。 上記(2)について。まず、履行拒絶に関連する近年の判決からの判断基準の抽出を行った(下記〔学会発表〕記載の2件)。これにより一定の判断基準を提示したが、その後、関連する下級審判決が登場したため、現在、その精査を行い、より精確な判断基準の抽出を行う予定である。次いで、ドイツにおいて履行拒絶の要件のひとつである「確定性」がどのように導かれ、また、「確定性の有無を判断するための基準」もしくは「確定性を徴表する事実」としてどのようなものが考えられているかの調査を遂行した。最後に、イギリスにおける新動向の調査を行った。これらはいずれも先例のない研究であり、そこに意義と重要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由はふたつある。ひとつは、成果を寄稿した書籍の公刊が大幅に遅れていることである(下記15備考を参照)。これについては、寄稿した成果すべての採録は決定されているため、時間の経過による解決を待たざるを得ない。いまひとつは、イギリスにおいて本研究課題に関連する新しい動向が生じたことである。そのため、本来予定されていた研究計画に追加して、これについても研究を進める必要が生じている。その結果、全体の進捗にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は折り返し地点を迎えている。基本的には、これまでと同じく研究計画に沿って研究を推進していく。しかし、イギリスの新動向にも目配りするために、若干の変更が余儀なくされている。これに対応するために、平成24年度は、当初の研究計画においてアメリカ法およびフランス法の研究に充てる予定であった時間を圧縮し、その分をイギリス法の研究に充てる。また、平成25年度には、約款の調査・研究に着手し、実務の実相の分析に重点を置く予定である。 また、平成22年度および23年度の研究とも総合して、本研究課題全体の成果の取りまとめを意識し、これを公表するための準備にも力を注ぐ予定である。
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