研究概要 |
本研究は、三角関係型不当利得に関する英米独仏の判例・学説の動向を比較することを手法として、個別具体的な紛争解決基準たりうる類型化を形成するための視座を獲得することを目的とするものである。平成25年度は、昨年度に引き続き、英米の文献の整理を行い、並行してフランスの文献の整理に着手した。 まず、イングランド法については、今年になって公刊されたAndrew BURROWS, A RESTATEMENT OF THE ENGLISH LAW OF UNJUST ENRICHMENTを精読した。そこでは、英米法的「不当性要素」アプローチと大陸法的「法律上の原因の欠如」アプローチとの融合を目指す内容が提案されており、比較法上示唆に富むものであった。しかし、本研究のテーマである三角関係型の事例に関しては、規定はおろかコメント上でもほとんど扱われておらず、Simms事件以降一定の議論がなされていたこの問題に大きな影を落とすのではないかと危惧される。 次に、アメリカ法については、第三次原状回復・不当利得リステイトメントを分析した。そこでは、イングランドにおけるのと異なり、三者関係に関する規定があるほか、第一次では別に配置されていた、bona-fide purchaser ruleとdischarge-for-value ruleが「第8章原状回復に対する抗弁」において並べて(66,67)配置された。もっとも、本リステイトメントは大部にわたるため、それら関連規定がどのように位置づけられるべきかについては、引き続き検討が必要である。 フランス法については、いくつかの判例を検討にするにとどまったが、支払指図に瑕疵がある場合については、不当利得法の問題としたうえで、受領者の保護の可否を対価関係の存否にかからしめるものもあった。
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