本年度は、本研究に関する最新の判決等の文献資料を収集し、かかる資料の分析・検討を行った。その上で、2010年度と2011年度に著作権に関する意識をテーマに札幌市で行った街頭調査および郵送調査の分析結果の信頼性を高めるために、本研究費を活用して、札幌市で実施した上記アンケート調査と同様の内容で日本全国を対象とするオンライン調査を行った。具体的には、世論調査会社に依頼し、883件の有効回答データを集めた。オンライン調査により得られたデータを分析した上で、札幌市で実施した街頭調査と郵送調査によって集められたデータと比較した。オンライン調査の結果により札幌市で行った2つの実証調査の信頼性が確認されたのみならず、ユーザーが著作物の利用に際してどのような行動を取るかといった意思決定を左右する新たなファクターも見出された。 一般市民は著作権を尊重しないとよく言われているが、上記の3つの実証調査の結果からは、一般市民は著作権法の正当化理由の一つである「種蒔かざる者、刈り取るべからず」という原則を理解しているように思われる。また、侵害が大規模であったり商業目的である場合には、それが不当であり適切に処罰されるべきと認識している。他方で、私的目的の利用については、たとえ著作権法が明示的に禁止している場合であっても、それは許されるべきと考えており、さらに、自分にとってあまり価値のない利用を規制されても気にしないが、自分にとって重要な利用を規制されることには強く反発する、という傾向も見られた。したがって、著作権法はインターネットへの楽曲のアップロードを含む、前者のような行為を行う者を対象にした場合には効果的に機能しうるということができる。
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