研究課題/領域番号 |
22730102
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
堀口 健夫 北海道大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (10374175)
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キーワード | 国際環境法 / 国際河川法 / 衡平利用原則 / 予防原則 / 重大損害禁止原則 / 持続可能な発展 |
研究概要 |
20刊年度は、2010年度に着手した基礎的作業を継続・発展させながら、大きく以下のような作業を遂行した。 第1に、持続可能な発展、予防といった環境法原則の発展が、国際河川制度に与えているインパクトの現状を精緻に把握することを目的として、欧州の個別の河川条約体制の展開の分析、並びに、それらの個別条約と相互作用を与え合う一般条約や法典化文書(国際法委員会・国際法協会等によるもの)の分析を手掛かりに、さらに検討を進めた。この成果の一部は、以下の研究成果の欄に挙げている論文において既に公表済である。そして第2に、上記の作業の成果や国際司法裁判所のパルプミル事件判決(2011年)の検討を手掛かりに、国際河川条約の中核原則である衡平利用原則の解釈と環境保護規範との関係、河川条約上の実体的規則と手続的規則との関係、手続的規則違反の法的帰結等、国際河川法における資源配分規範と環境保護規範の相互関係を理解するうえで重要と考えられる論点の抽出・整理を行った。この点については、同判決の評釈という形で公表の準備をさらに進めている。そして第3に、上記の第2の作業で整理された論点の検討を深めるために、国際法委員会が中核的役割を果たした、「国際河川の非航行利用」、「国際法上禁止されていない行為による有害な帰結に関するライアビリティ」、「国家責任」といった主題に関する法典化作業の詳細な分析作業に着手している。またそれと同時に、最新の学説の理論状況の整理と欧州の河川条約体制の実証的分析を併せて実施することで、上述の諸論点に関する理論と実践の考察を深めている途上にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目である2010年度は、国際河川分野における資源配分規範と環境保護規範をめぐる学説の議論状況の把握と、欧州における条約体制の発展状況の把握に主に努めてきた。以上の作業を継続しつつ2011年度においては、法典化作業や国際判例の分析を進め、具体的な論点と検討の視座の整理を行い、さらにその本格的な理論的・実証的検討に着手するに至っており、最終年度に向けて作業は着実に前進している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、上の研究実績の概要で挙げた3つ目の作業を中心に研究を進める。その際には資料・文献の収集作業は相当程度進んでいることから、その詳細な分析作業に比重を置く方針である。ただし今後は、例えば国家責任法一般やEU法に関する知見もさらに深める必要があり、その限りで文献等の収集作業もある程度見込んでいる。また現地の条約委員会等でさらに資料収集等を行う必要が生じた揚合には、当地での意見交換等により成果の洗練にも併せて努め、最大限効率性を追求する。こうした洗練化も来年度の重要な作業方針であり、中間成果は研究会・学会等でも積極的に公表し、内容を適宜改善していきたい。なお時間的な限界を考慮せざるをえない場合には、検討すべき論点に優先順位を設け、成果の範囲が多少限定されても着実な業績を目指す。
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