研究期間の最終年度となる平成24年度は、前年度までの研究成果を踏まえたうえで、特に手続的義務の発展と変質という観点から、国際水路法(国際河川法)における国際環境法との交錯・調整の問題の検討をさらにすすめ、学会での公表を通じてその成果の一層の洗練と整理を行った。国際水路法においては、当初より関連国や条約機関に対する事前通告や協議といった手続的な義務が発展したが、今日の特色の1つは、そうした手続が環境保護の価値や規範を意思決定過程に組み込む機能を期待されている点にあり、国際環境法との交錯・調整という法現象の解明をテーマとする本研究にとって、それらの手続的義務の検討が極めて重要であるとの認識に至った。そこで24年度では、従来必ずしも十分に解明されてこなかった、手続的義務違反の法的帰結の問題、そしてその点との関連で手続的義務と実体的義務(衡平利用・重大損害禁止)との関係に特に焦点を当て、近年これらの問題を扱った国際司法裁判所パルプ工場事件判決(2011年)の評価を出発点に、学説・国際実行の検討を行った。24年度の半ばには、それらの成果を、国際水路法の研究が進んでいる欧州の学会(欧州国際法学会・国際環境法研究会合)のほか、国内の国際学会(日本・韓国国際法学会共同会合)において公表するとともに、専門家との意見交換等を通じて、さらに成果を洗練させることに努めた。最終的な研究成果は近々論文の形でも発表する予定である。
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