現在、日本では、政府が水害について賠償責任を負う能性が認められている(国家賠償法2条)。また、河川法は行政の許可のもとで水利権の譲渡を認めるものの(34条)、この規定はあまり活用されでいない。そして、日本は、火力・原子力とともに水力によって電力を賄っている。さらに、本土では地盤沈下への懸念から地下水の利用を抑制してきた。これらの問題に答えるために、行政は、ダムによって地表水及び地下水を管理してきた。しかし、社会経済的影響や環境影響・財政的な持続可能性を勘案すると、今後は、治水・利水・環境の三つの要素を総合的に考慮し、ダムに過度に依存せず流域のつながりを尊重した水利用の体系-流域の統合的ガバナンス-が必要である。 2010年度は、7月までは、上記の問題についてアメリカ合衆国の現状について文献調査・現地調査を行いながら、予防原則に関する論考及び日本の公物法全般及び河川法・道路法等に関する論考をまとめた。9月には、Groundwater Resources Associationにおいてポスター発表を行い、日本の地下水保全条例とカリフォルニア州の地下水保全条例との比較検討を行った。また、Klamath川流域において環境指標であるサケが激減し、ダム撤去に向けた合意が形成されつつある。そこで、Klamath川流域の現状を確認するため、現地調査を行った。11月末から12月上旬には水取引の実態について行政や関係者へのヒアリング調査及び現地調査を行い、12月中旬以降はKlamath川の現状について行政や法律事務所や行政へのヒアリング調査を行った。2011年2月には、Bay Area周辺のWater Law Professorの昼食会で日本における水取引の可能性について口頭発表し、3月には同じ内容のUC BerkeleyのWater Resources Lawにおいてミニ講義を行った。
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