本年度は前年度までの研究に続いて、戦後の政策決定過程において野党が政策の内容に及ぼした影響について研究を行った。戦後の内閣の主要政策と野党が求めた政策を把握した上で、内閣と野党がいかに相互に影響し、内閣の政策に野党の政策が一部反映されていることを明らかにした。研究の中では特に1990年代以降の政策決定過程を重視し、次のことを明らかにした。 1994年に新進党が結成されて以降、政策決定過程において野党の政策は特に重要な意味wを持つようになる。新進党は「たゆまざる改革」を掲げて経済構造改革、省庁再編などを打ち出した。この新進党に対抗する形で橋本内閣は行政改革、財政構造改革などに取り組む。新進党は97年12月に解党し、その後、民主党が主要な野党として成長する。民主党は1998年7月の参議院選挙後の国会で、金融機関の破綻処理策に関する一時国有化案を小渕内閣に受け入れさせることに成功した。小渕内閣が財政支出を拡大すると民主党はこれを批判し、緊縮財政をはじめとする構造改革を求めるようになる。2001年4月に登場した小泉純一郎内閣はこの構造改革に取り組むことになる。 2006年以降民主党は構造改革を批判し、格差対策を政策の柱として打ち出す。小泉内閣後に登場した安倍晋三内閣はこれを意識し、構造改革政策の一部修正を図る。2009年8月の総選挙に民主党は勝利し、野党時代に掲げた政策の実現を目指すことになる。しかしながら、2010年7月の参議院選挙に敗北したために、野党に転じた自民党の要求を一部受け入れないと政策が実現できないことになる。こうして菅直人内閣や野田佳彦内閣は自民党の要求を受け入れながら子ども手当の見直しや社会保障と税の一体改革に取り組むことになった。 この他、二大政党制のモデルであるイギリスにおいて野党がいかに政策に影響に及ぼすことを試みているのか調査した。
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