研究課題/領域番号 |
22730113
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
田中 拓道 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 准教授 (20333586)
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キーワード | 福祉国家 / 脱商品化 / 再商品化 / 社会運動 / 比較政治 / ヨーロッパ |
研究概要 |
平成23年度の研究計画は、(1)1990年代以降の比較社会運動論の研究を踏まえ、特に貧困・福祉に関わる社会運動を「再商品化」「脱商品化」という観点から比較する分析枠組みを構築し、(2)英仏社会運動のイデオロギー的志向を調査することであった。このうち(1)比較社会運動論については、J-コーエン、C.オッフェ、A・メルッチなどの「新しい社会運動論」と、G-マッカーシー、N.ザルドらの実証的な社会運動論を検討し、「脱商品化」という概念を物質的水準のみならず規範的水準に拡張することで、福祉レジーム研究との統合が可能となる、と主張する論文を発表した(→図書『模索する政治』所収)。さらにこれまでの資本主義論、国家論を踏まえ、「再商品化」「脱商品化」の概念と政策上の対抗を、労働市場への包摂か、労働以外の多様な生き方の選択肢の提供か、という点に設定する論文を2本公表した(→図書『働く』および『世界政治を読み解く』所収)。(2)英仏社会運動に関しては、フランス福祉レジームの変容について、労働組合、家族アソシエーション、救貧・援助団体の動向を踏まえ、その特徴を「再商品化」の漸進と「個人化」の急速な進展としてまとめた論文(→図書『福祉レジームの収斂と分岐』所収)、ヨーロッパ統合の国内福祉政策に与える影響と対抗軸の形成を英仏で比較した報告(→学会発表「連帯は国境を超えるか?」)、および英仏独の比較思想史を考察した論文(→図書『社会保障と福祉国家のゆくえ』所収)を公表した。現在の社会的包摂政策や救貧政策を担う英仏の社会運動に関しては、夏のイギリス・フランス滞在で資料を収集し、インタビュー調査を行ったため、次年度にまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去2年間の研究によって、「脱商品化」「再商品化」の対抗軸については考察を深められた。社会運動と福祉レジーム研究の接合についても成果を公表でき、一定の見とおしを付けることができた。英仏の社会運動の実態については、まだ歴史研究や政策レベルの研究にとどまっているが、次年度に全体の成果をまとめられる資料はそろっていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ヨーロッパ統合の影響をより重視しつつ、国内政党システムの変容、福祉レジームの変容と、社会運動の動向を結びつける考察を行っていく必要がある。最終年度となる今年度は、とりあえずこれまでの考察をまとめた単著を出版することを目指したい。
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