昨年度には、「取引費用の数理モデル」と題する学術論文を『法学論叢』に第168巻第1号から第5号にかけて、5回にわたって掲載した。そこでは「取引費用モデル」の数理モデル化に取り組んでおり、民営化にともなう費用や効用を定量的に測定・予測するための手掛かりが得られた。本年度はその成果を踏まえて、いかなる分割・民営化の形態がより効率的なのか、という問いを解くことを研究の目的とした。そのために、英国とニュージーランドにおける郵政民営化に関する文献及び資料を収集・精読することを研究の計画として立てていた。計画した通り、両国に関する資料を集めるとともに、日本とドイツの郵政事業と比較しながら分析を進めた。取引費用モデルに基づいて日本・ドイツの郵政事業と英国・ニュージーランドの郵政事業の効率性を比較・分析した結果、英国とニュージーランドの方が日独に比べて非効率的であることが判明された。現在は、その効率性の違いを生み出した要因に関する政治過程を調査している。政治過程を丹念に追跡することによって、日本・ドイツと英国・ニュージーランドにおける郵政事業の効率性の差が明らかになったくると考える。来年度にはその具体的な研究成果を各学会に発信し、雑誌に掲載する予定である。
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