本研究は、自生的に生じてきた市民の諸活動をめぐる「制度化」事例を分析し、「市民社会の論理」と「行政の論理」の相克と浸透可能性を論じた上で、「公共空間における公共性の内実に市民的公共性を浸透させるための条件」を明らかにすることを目的としている。 当初のもくろみとしては、①法社会学、社会システム論などの理論的文献の検討を通じて、「制度化(法化)」をめぐる既存の諸命題・仮説の整理を行い、他方で、政治学、社会運動論などの文献の検討を通じて、「市民的公共性の浸透条件」をめぐる諸命題・仮説の整理を行うことで、「制度化」の事例研究を行うための分析枠組を構築する、②この分析枠組に基づいて、対照的な結果となった制度化事例を複数取り上げ、実証的な事例研究を行う、③制度化をめぐる主要アクターの種類・数・パワーや利得構造等に着目した制度化の「ゲーム構造」の類型化作業を行った上で、それぞれの類型ごとに「市民的公共性の浸透条件」を明らかにする、ということを目指していた。 しかしながら、上記作業を進める中で、「制度化」をめぐる事例はあまりにバラエティに富んでおり、それを統一的に把握する一般理論の構築は著しく困難であり、また類型化も難しいという判断に至った。 そこで、次善の策として、「公共空間における公共性の内実に市民的公共性を浸透させるための条件」のうち、「必要条件」としての①分権改革、②「市民社会の論理」と「行政の論理」の橋渡しを可能にする自治体職員の働き方、③市民社会の自己統治能力とそれを支える自治体のルール創造に焦点を当て、それぞれについて考察を深めることにした。 上記のうち、①については韓国地方自治法学会誌に寄せた拙稿が、③については雑誌『地方自治ふくおか』に寄せた拙稿2本が具体的な成果である。②については、2013年秋に単著『自治体職員の働き方』(仮題)を公刊予定(出版社も決定済み)である。
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