研究概要 |
本研究は,執政中枢に関する研究の観点を踏まえつつ,わが国の地方政府の調整機構の一般性と特殊性を明らかにすることを目的とした.具体的には地方政府の条例・計画・予算・人事等に関する調整・決定過程を対象に,全体的調整(総合調整)の観点からは庁議制度,水平的調整の観点からは協議機構を観察対象におき,分析を進めた. 平成23年度の本研究では,平成21年度,22年度に引き続き各個別地方政府の例規集及び各種行政改革関連計画等の資料収集を継続し,上記観察対象に関する制度及び運用面からの特性の抽出と分析を行った.特に平成23年度の研究では,研究計画書のなかでも,従来の地方政府研究では十分な観察を進められることがなかった専決・代決権限制度の分析に重点を置き,地方政府内での権限分散化と調整制度の現状を分析した.その結果,同研究を通じて地方政府内での委任制度の類型を把握するとともに,委任された職員に対する長による監督制度の課題を新たに把握した.この点は,次年度以降の新たな研究課題とした. 以上,本年度の研究を通じて,地方政府内での「決定」に至る以前での調整手続に関する事実情報,基礎的な知見を得ることができた.特に,わが国のこれまでの地方政府研究では考察されることがなかった庁議制度の運用面に着目し,庁議制度の課題設定となる付議制度の運用時の組織内分業の特性を把握することができたこと,そして,庁議制度を通じた全体調整の対象となる事案の共通性を明らかにした点は,本研究の成果である.平成23年度の研究成果は,平成23年度内で著作・論文により公刊し,また,平成24年度以降も論文等により順次公刊する予定である.
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