「(選挙)情勢報道」は投票行動に影響を及ぼしうると考えられている。具体的には、自らの一票をなるべく有効に活用したいと考える有権者は、情勢報道で伝えられた候補者の当選可能性を考慮に入れて、投票意図を形成したり変容させたりしている可能性がある。このような、選挙結果に関する予測に基づく投票は、「戦略的投票(strategic voting)」と呼ばれる。特に、同一政党から複数の候補者が出馬する中で相対的に不利な状況にあると報じられた候補者への投票を選択するようになる「アンダードッグ効果」の形での戦略的投票に関しては、検証に付す学術的意義が高いと考えられるにもかかわらず、データの限界から、現状では実証的に検討することができない状況にある。そこで本研究では、2010年7月11日投票の参院選の前後に、民主党が2名の候補者を立てた愛知県選挙区の有権者を対象に、2波のパネルWEB調査を実施した。また、選挙後には、選挙期間中に記録しておいた読売・朝日・毎日・日経・産経・中日の各紙に掲載された、情勢報道の内容分析を行った。このように平成22年度には、同一政党(民主党)から複数の候補者が出馬している状況において、選挙の情勢を考慮に入れて投票意図を形成したり変容させたりする有権者が存在するのか、(存在する場合)そのような有権者はいかなる特徴を有するのかを、実証的に解明することを可能にするデータの収集を行ったのである。
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