これまで行政学では、階統型組織による一元的な組織編成が効率的な行政をもたらすとの見解が唱えられる一方、多元的な組織編成の下で展開される競争的・冗長的な行政の可能性についても理論的検討が加えられてきた。本研究は、後者の多元的な組織編成に基づく競争的・冗長的な行政のあり方を「多元分散型行政システム」と捉えた上で、その発現形態たる「重複行政」の実態に関する比較分析を行うことにより、「多元分散型行政システム」の意義と理論的可能性を再検証しようとするものである。 研究初年度となる平成22年度においては、多元分散型行政・重複行政の分析枠組みを確定するため、これまでの行政学の理論研究を再検討する作業を重点的に行った。具体的には、行政の多元性を称揚した政治学者A.ウィルダフスキーの議論を探究するため、彼の文書が所蔵されているカリフォルニア大学バークレー校バンクロフト図書館にて資料調査を行った。また、同校で教鞭を執っていたM.ランドーらの冗長性(redundancy)を重視する行政理論についての詳細な検討作業を開始した。後者の研究については、来年度早々にも整理を終え、公表に向けた準備を進めることにしたい。
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