研究課題/領域番号 |
22730119
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
伊藤 正次 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (40347258)
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キーワード | 重複行政 / 行政学 / 多元分 / 冗長性 |
研究概要 |
これまで行政学では、階統型組織による一元的な組織編成が効率的な行政をもたらすとの見解が唱えられる一方、多元的な組織編成の下で展開される競争的・冗長的な行政の可能性についても理論的検討が加えられてきた。本研究は、後者の多元的な組織編成に基づく競争的・冗長的な行政のあり方を「多元分散型行政システム」と捉えた上で、その発現形態たる「重複行政」の実態に関する比較分析を行うことにより、「多元分散型行政システム」の意義と理論的可能性を再検証しようとするものである。 研究第2年度となる平成23年度においては、多元分散型行政・重複行政に関する理論レビューを行い、多元分散型行政・重複行政の実証分析に向けた理論枠組みの精緻化を行った。具体的には、M.ランドーらを嚆矢とする行政の冗長性(redundancy)に関する理論を整理し、その意義と限界について再検討する論文を執筆し、『季刊行政管理研究』誌上に公表した。その過程で、カリフォルニア大学バークレー校政府研究所にて資料調査を行い、ランドーらのワーキング・ペーパーを閲覧・検討する機会を得た。また、2012年3月23日に東京大学社会科学研究所全書的プロジェクト「ガバナンスを問い直す」のローカル・ガバナンス班研究会において、「重複行政・冗長行政とローカル・ガバナンス」と題する報告を行い、23年度の研究成果の一部を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2年度において、行政における冗長性に関する理論を整理し、その成果を公表する機会を得たことは、当初の研究計画通りである。重複行政・冗長行政に関する具体的な事例研究についても、就労支援行政を素材として検討を開始したところであり、研究計画は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
冗長性は、福島第一原発事故等の過酷事故を回避する上でも、組織設計上の重要な指針となり得る。そのため、来年度は、今年度の冗長性に関する研究で得られた、高信頼性組織研究や行政の多中心性(polycentricity)に関する理論研究の成果を整理し、多元分散型行政理論の全体像を描き出す作業を行うとともに、就労支援行政に加えて具体的な事例研究を行い、多元分散型行政理論の射程を検証することを試みたい。
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