研究課題/領域番号 |
22730119
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
伊藤 正次 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (40347258)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 重複行政 / 行政学 / 多元性 / 冗長性 |
研究概要 |
これまで行政学では、階統型組織による一元的な組織編成が効率的な行政をもたらすとの見解が唱えられる一方、多元的な組織編成の下で展開される競争的・冗長的な行政の可能性についても理論的検討が加えられてきた。本研究は、後者の多元的な組織編成に基づく競争的・冗長的な行政のあり方を「多元分散型行政システム」と捉えた上で、その発現形態たる「重複行政」の実態に関する比較分析を行うことにより、「多元分散型行政システム」の意義と理論的可能性を再検証しようとするものである。 研究第3年度となる平成24年度においては、平成23年度に引き続き、多元分散型行政・重複行政の実証分析に向けた理論枠組みの精緻化を行った。具体的には、道府県と大都市の重複行政を解消するための制度改革構想を整理した論稿を『月刊地方自治』、『月刊選挙』等に発表したほか、2012年11月に長野市で開催された日本自治学会において、「大都市制度改革の『周辺的』課題」と題する研究報告を行った。また、中央政府内部の多元的組織対立を克服するための総合調整機構の実態に関する研究を行った。 その他、公表には至っていないが、就労支援行政における多機関連携の取り組みについての事例研究を継続した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異なるレベルの政府間の重複行政を解消するための大都市制度改革に関する論稿を公表し、平成23年度に公表した冗長行政に関する理論研究と相まって、重複行政を多面的に捉えることに成功している。 ただし、重複行政がいかなる場合に機能するかという点に関する検討は十分深められておらず、さらなる事例研究の蓄積を行うことが課題となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、重複行政・多元分散型行政の実態をさらに深掘りするため、地域における就労支援行政をめぐる多機関連携(都道府県労働局、都道府県、市町村等)に関する事例分析を行う。その際、関係者へのインタビューを行うとともに、東日本大震災の被災地における就労支援行政にも焦点を合わせ、多機関連携の実態と課題を考察する。 また、中央政府内部の重複行政・冗長行政の事例研究を行った上で、研究最終年度となる平成25年度においては、理論と実証の両面から、多機関連携が可能となる条件を明らかにする作業を行い、研究の総括を行うことにしたい。
|