本研究は、韓国の大統領制について、比較執政制度論の研究成果を活用し、多国間比較と時系列比較の中に位置づけることで、大統領の政策課題の立法化におけるヴァリエーションと変化を解明することである。今年度は、大統領の立法上の「強さ」について仮説を構築する上で重要な概念である憲法権限と党派的権力について検討を行った。後者については、政党規律や政党凝集性の概念化と方法論的な精緻化が課題であることが明らかになった。 成果は次のとおりである。第1に、首相(国務総理)はいるものの、その任命や解任をめぐる大統領と議会の関係から、韓国は半大統領制ではなく大統領制であることを確認した。 第2に、党派的権力、その中でも大統領の与党統制を左右する選挙サイクルについて、李明博大統領が大統領選挙の直後に実施された議会選挙において与党候補の公認過程を統制できた理由を分析した。 第3に、大統領選挙と議会選挙の選挙サイクルは常に非同時ではあるものの一定の間隔で変化するという先行研究には見られない韓国事例の制度配置によって、大統領選挙の予備選挙における敗者の(不)同意は左右されるということを確認した。
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