本研究は、韓国の大統領制について、比較執政制度論の研究成果を活用し、多国間比較と時系列比較の中に位置づけることで、大統領の政策課題の立法化におけるヴァリエーションと変化を解明することを目的にしている。最終年度である今年度は、これまでの研究実績に基づいて、成果を公表しつつ、体系化や一般への還元を行った。 成果は次のとおりである。第1に、日本政治学会、日本国際政治学会、現代韓国朝鮮学会という政治学、国際政治学、地域研究のそれぞれの学会で発表を行うことで、本研究が志向してきた理論と実証のフィードバックやシナジーのあり方を示し、今後の体系化に向けてレレバンシーを担保した。 第2に、比較執政制度論に基づいた韓国政治の入門書を新書というかたちで公表し、広く一般向けに研究成果の還元を行った。また、今年度激動した日韓関係についても入門書を同じく新書というかたちで公表し、国内政治の変化と国際関係の連動を踏まえた上で外交に臨むという見方を提示した。 第3に、韓国の大統領制において重要な役割を果たし、これまで比較執政制度論で看過されてきた非選出部門の一つである選挙管理委員会について、その政治的帰結や、そもそも制度としての生成・持続のダイナミズムに関する論文を公表した。その結果、大統領の政策課題の立法化におけるヴァリエーションと変化を解明するためには、執政と議会という選出部門間の関係だけでなく、選挙管理委員会や憲法裁判所といった非選出部門の役割も分析枠組みに加える必要があることが明らかになった。この点については、新たな研究課題として次年度以降に取り組む所存である。
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