本研究は、都道府県の政策形成への住民参加のあり方に資する知見導出を念頭におき、政府規模と県政策への参加の関係を探究したものである。初年度は九州7県を対象とし、県規模と市町村規模の比較から県規模の参加への影響を分析した。まず、九州7県に行ったヒアリング結果から、県の参加制度は、市町村の参加制度と同様のものが用意されていることを確認のうえ、県民に対するアンケートにより、政府規模と参加の関係を検証した。県規模の参加への効果は、規模の大きな県ほど参加実績は少ないということであったが、有効感や期待の参加実績への効果は把握できなかった。他方で関心や認識といった理解可能性が高い県民ほど参加実績は高くなっていた。住民に身近な政府である市町村規模は、県政への参加実績には影響しなかった。県政参加実績と市町村政参加実績との比較では、政府規模が参加に負の効果を与える点は同じであったが、市町村政参加実績では期待の参加促進効果がみられ、市町村政での有効感も有意になるケースは少なかったものの県政での有効感とは異なり符号は正となり、ダールの市民有効性とシステム容力が参加に影響するという論理は、規模の小さな政府(市町村)に該当するといえる。 県政への参加意向については、県規模、市町村規模とも県政への参加促進効果はみられなかった。政府規模は県政への参加意向に関係ないというのが本研究での一応の結論である。参加実績との共通点は、県の政策や問題などを認識している県民ほど、また県政に関心をもつ県民ほど、参加意向が高いということである。認識、関心のいずれの観点からも県の政策を県民が理解し、それに関心をもつことが参加の実績の重要な要因であり、これからの参加意向の促進方策でもあるといえる。その意味で、県政への参加手法をどのように展開していくべきかは、広域自治体にとっての自治向上のための肝要な課題であるといえる。
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