研究課題/領域番号 |
22730133
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
高橋 若菜 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (90360776)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際規範 / 循環型社会 / 欧州 / 東アジア |
研究概要 |
本研究は、国際規範が何故いかにして形成、発展されたか、これらがなぜいかにして国家さらには地域レベルにまで浸透あるいは変容し内部化されたかに関心を寄せ、循環型社会形成にかかわる国際規範をとりあげ、国際規範の浸透・変容を左右する国内政治要因は何かについて、循環型社会形成分野を対象として実証を行い、国際規範のサイクルに関する理論的示唆を得ることを目的としている。国際レベル(インターナショナル)・地域レベル(リージョナル)・国レベル(ナショナル)・地域レベル(ローカル)の相互作用の中で、国際規範の相互作用を実証的に明らかにしようと試みた先行研究は例を見ず、挑戦的・先駆的研究と位置付けることができる。 この目的に基づき、平成24年度は、以下の2点について研究を進めた。 1) 理論的側面:分析概念・枠組を確立させることをめざし、国際規範や国際協調に関する理論研究の先行研究を継続して調査した。 2) 実証的側面:循環型社会形成に関わる国際規範のうち、拡大生産者責任原則をとりあげ、平成22年度の研究の中で明らかになった当該国際規範の形成・発展・浸透・内部化ルートに関する推論に基づいて、スウェーデンの3都市(マルメ市、ルンド市、ヘルシンボリ市)について実証研究に着手した。具体的には、当該規範に基づいて実施された一般廃棄物のプラスチック分別回収資源化施策が、スウェーデンでどのようにして地域レベルで内部化され受容されたかについて、スウェーデンの対象都市においてフィールドワークを行なった。フィールドワークでは、市民による規範の受容・実践に関する理解を参加型観察により深めることを目的として、研究者自身も日常生活の中で施策を経験的に実践し観察した。また実践する市民を対象として、広範なアンケート調査を、ルンド大学の研究協力者らと共に実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スウェーデンにおける実証的側面を中心に研究を大きく進展させることができた(詳細は以下の通りである)。こうした進展は、日本学術振興会の二国間研究交流事業特定国派遣研究者として採択されたこと、また宇都宮大学国際学部でサバティカル研修を得ることができたことにより、実現することが出来た。スウェーデンで進展することが出来たフィールドワークの内容は以下の通りである。 a.フィールド・ワーク;①家庭ごみ分別収集現場視察:循環型社会形成に拘る国際規範の一つである拡大生産者責任原則の政策の中で、資源ごみの分別収集は、重要な側面の一つである。この分別収集がどのように実践されているかについて、様々な住居タイプを訪問・視察した。②スコーネ地方の廃棄物処理視察ツアーへの参加(ルンド大学国際環境産業経済研究所による実施:拡大生産者責任の対象となる資源ごみの収集処理現場を視察するとともに、廃棄物管理体制、自治体や関連企業による役割分担等についても、包括的な知見を得た。③スコーネ地方の市民インタビュー:資源ごみ分別収集への参加と評価について、質的調査法に基づき市民インタビューを行った。 b.インタビュー(政策担当者・専門家);スウェーデン環境庁の政策担当者や専門家から、国際規範の受容や実践、また最新の議論についても、様々な角度から意見交換を行い知見を得た。 c. アンケート調査(家庭ごみ分別利便性に関して);①共同研究者らとの入念な議論を通じて、プレアンケートを作成し、所内の協力を得てプレ実施した。②所内セミナーでの発表の機会を通じて、アンケート内容を修正、推敲した。③アンケート調査を翻訳し(外注委託)、アンケート調査会社と打合せを行い、実施に向けての準備を行った(平成25年1月、アンケート調査会社による実施、1月下旬回収予定)。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる本年度は、これまでの理論研究レビューや実施したケース・スタディを取りまとめていく。また、ケース・スタディとして取り上げたスウェーデンと日本のうち、発祥国スウェーデンでは国際規範の内部化から15年たった現在、アクターの相互関係が変容し制度変容が起きる可能性があることに留意し、さらなる追加調査を行い、データのアップデートをはかる。 1)理論研究の再構成:レジーム論や、制度論、コンストラクティビズムの先行研究の枠組みが、当該分野の国際規範の相互作用の分析にどのように応用できるかを考察する。前年度までの実証研究では、国内および地域(ローカル)レベルでの相互作用に多くの時間と労力を咲いたことをふまえ、比較政治論的観点を中心に、分析概念・枠組を整理する。 2)実証研究のとりまとめと追加調査 昨年度(平成24年度)は、特定国派遣研究者事業に基づき、スウェーデン ルンド大学に9ヶ月滞在する機会を得て、スコーネ地方(ルンド市、ヘルシンボリ市、マルメ市など)を事例として、広範なフィールドワークを行った。調査を通じて多くの興味深いデータが得られたが、そのうちの一つが、当該規範(拡大生産者責任) の分別収集の側面に関わるアクターの相互関係である。スウェーデンでは規範の内部化から15年たった現在、この問題が今再び社会的関心を得て課題設定されつつあり、アクターの相互関係が変容し制度変化が起きる可能性もはらんでいる。このため、こうした動きに注視した追加調査も行う。 3)論文執筆と残された研究課題の検討1)2)をとりまとめて、論文を執筆し、学会報告や論文投稿を目指す。また、残された研究課題についても整理し、更なる研究発展の源とする。
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