平成24年度は、平成23年度に引き続き、未公刊史料の収集・分析を進めた。平成24年度前半(4月中旬~9月中旬)にオックスフォード大学にて在外研究を行う機会を得たため、イギリスの政策決定過程に関する史料の調査・収集を徹底して行うことができた。在英中はロンドンの英国立公文書館にて合計約3週間にわたる史料調査を行い、英ウィルソン政権の首相官邸文書、内閣文書、および外務省文書を中心に約一万数千点の文書を収集した。またオックスフォード大学ボードリアン図書館で関連の先行業績を閲覧したほか、英国での学会参加を通じて英国の研究者との意見交換を行うこともできた。 平成24年度は、イギリス側の史料を収集・分析し、かつ、平成23年度までに米国で収集した史料の分析結果と比較検討することで米英の東西デタントに関する見方の相違や、そこに影響を与えた西側同盟要因、さらにこの二つの政策領域における米英の協調・対抗関係を分析することに取り組んだ。これによってジョンソン政権のデタント政策の形成過程とそこにおける同盟要因、また、それに対する西側同盟諸国の反応について立体的に描くことを試みた。この分析を通じて、ケネディ政権とジョンソン政権の政策の連続性や、政策決定過程における同盟要因の重要性が改めて確認された。ジョンソン政権は、ケネディ政権期の米ソ関係の展開と西側同盟内政治の経験をふまえてその政策を立案しており、これは1964年以降の国際情勢の変化と共にジョンソン政権の対外政策を強く規定していた。その背景を明らかにするため平成24年度は、ケネディ政権のデタント政策とそれをめぐる西側同盟内政治の力学を体系的に整理することにも改めて取り組んだ。その結果公刊された単著は、ジョンソン政権期を対象とする本研究課題の射程を超えるものではあるが、その国際的な背景を明らかにしたという意味で重要な関連性を持つものであるといえる。
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