本研究は、日本が1910~1930年代のアジアで経済的な地域秩序形成を試みるなか、植民地を有した欧州諸国との間で、どのような反応と経済摩擦を引き起こしたかを、台湾銀行の南方(南支・南洋、現在の華南から東南アジア)進出という、日本の経済的伸張を象徴する事象のなかで明らかにするものである。 この課題を研究するため、平成22年度は台湾、ロンドン、東京での調査を行う予定であったが、ロンドンでの調査は史料事前調査に時間をかけたため、次年度以降とした。このため本年度は台湾、東京、シンガポールでの調査を実施した。また台湾での調査については、本科研費とは別に取得している民間財団の研究助成金を充当した。 具体的な成果としては、以下の通りである。 (東京)外交史料館、公文書館、日本銀行金融研究所での史料調査を行う。具体的には台湾銀行の南進についての、在外公館.諸関係官庁・日本銀行の情報把握・施策などに関連する史料を調査・収集した。 (台北)台北にある「台湾銀行」経済研究室図書館が所蔵する、台湾銀行の各種史料を調査した。具体的には、すでに所蔵を確認している各支店からの大量の金融経済報告について、これまでに収集できていなかった部分を追加調査し、デジタルカメラを用いたデータ収集を実施した。 (シンガポール)国立公文書館、シンガポール国立大学図書館所蔵の海峡植民地、英領マラヤに関連するイギリス植民地行政文書を調査した。具体的には、海峡植民地、英領マラヤでの台湾銀行および日本資本についての情報把握・分析に関連した史料を収集した。
|