研究課題/領域番号 |
22730135
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
久末 亮一 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (60422383)
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キーワード | 帝国日本 / 近代 / 地域秩序 / 台湾銀行 / 南進 |
研究概要 |
本研究は、日本が1910~1930年代のアジアで経済的な地域秩序形成を試みるなか、植民地を有した欧州諸国との間で、どのような反応と経済摩擦を引きおこしたかを、台湾銀行の南方(南支・南洋、現在の華南から東南アジア)進出という、日本の経済的伸張を象徴する事象のなかで明らかにするものである。 こうした課題の下、当該年度には台湾銀行の南進について、日本での資料の収集、さらには台湾での関連資料の収集を継続したほか、当時において台湾銀行の進出先の一つとなった一大市場たる仏領インドシナを有したフランス植民地当局、およびその市場圏における最大の植民地銀行であるインドシナ銀行の史料を調査・収集するため、フランスでの現地調査を実施した。 これらの史料調査および分析からは、台湾銀行が目指した南進のなかで、仏領インドシナおよびこれを経営したフランス植民地政策による比較的閉鎖的な市場環境において複雑な摩擦に直面しており、台湾銀行の市場進出が必ずしも順調に推移したとはいえなかったことが明らかになりつつある。それは英国植民地であった海峡植民地などでの展開とは異なる市場環境であり、市場としての植民地環境を比較分析する上でも、有益な結果がもたらされるものと考える。 同時にこの多面的な考証からは、従来は日本の視点からのみ論じられてきた台湾銀行の営為が、実際にはアジアという大きな市場圏のなかで展開され、その文脈のなかでの位置づけが必要となっていることを、改めて確認させるに十分な内容であるとも考える。 現在は、以上の調査・分析内容による準備を基礎としながら、複数の論文作成を開始しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料分析・論文執筆に時間を要しているが、資料の収集・調査自体は順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
一昨年に引き続き、引き続き資料の分析および調査、さらにはこれを基礎とした論文の作成・発表を鋭意進めて行く予定である。
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