本研究の目的は、戦後の多層的な欧州秩序の成立と変容の動態を、歴史実証的に把握することにある。 戦後の欧州では、一方で冷戦秩序と他方で欧州統合が国際政治のダイナミズムを規定した。この欧州の地域秩序においては、米欧の軍事同盟(NATO)と西欧の経済的結束(EEC・EC)とが交錯して成立していたが、これまで大西洋同盟の形成と欧州統合の深化を導いた社会文化的要因には焦点が当てられてこなかった。そこで、本研究では戦後欧州の多層的な秩序の動態解明を図り、冷戦期の米欧関係・欧州統合に関する、より体系的な理解を構築することが大きな課題となる。特に、地域秩序の下支えとなったエリート間交流や各国の文化・情報機関の関与に着目し、地域秩序の構築過程における社会文化的要因を実証的に解明する。 平成23年度には、第一に、欧州統合・同盟機構化を促した社会文化要因は何かを解明すること、第二、に欧州統合、同盟機構化を促した社会文化要因は他の(軍事・政治経済)要因と、どう連関したのか解明するとともに、主にイギリスを中心に調査・分析を行い、政府および民間圧力団体のインパクトを検証した。中でも、NATOと広報文化政策の連関を解明するため、特に情報機関のヨーロッパ運動への関与実態の解明と、NATOに関する各国広報文化政策の実態の解明を行った。史料は、イギリス公文書館のほか、NATO史料館にて、収集した。研究の成果は現在、刊行に向けた準備を行っている段階である。
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