研究概要 |
本年度は、両大戦間期の東アジア秩序体制に重大な影響を与えた「ワシントン会議」関連の史料調査と、両大戦間期の「満州」をめぐる日中関係、ならびにそれに対するイギリスの認識に関連する文献調査を進めていった。 まず、本年度の研究文献調査により、近年、20世紀前半のイギリスの東アジア政策が、中国の「門戸開放」を主軸としたものであったと指摘する研究が複数現れつつあることが明らかとなった。この主張は、従来からの筆者の主張に合致するものであり、今後もこの方向性で本研究を進めていくことが確認できた。また、本研究に関陣する日本政治外交史研究においては,近年、日本陸軍及び政軍関係研究の進展が著しく、満州をめぐる日本側の政治過程、外交政策がより明らかになってきた。本研究もこれらの研究成果により、イギリスの東アジア政策、構想をより明らかにできるとの考えに至った。 また、本年度3月には、イギリスの国立公文書館に行き、1921年~22年に開かれた「ワシントン会議」に関連する史料を調査し、収集した。ここでは主に、ワシントン会議におけるイギリスの東アジア秩序構想、ならびに日中関係に対するイギリス政府側の認識面を中心に調査をした。帰国後、史料の読み込みを行っているが、現在までのところ、これまであまり指摘されてこなかったイギリスの東アジア政策構想が明らかになってきた。具体的には、九カ国条約と東アジア秩序構想との関運性や「四国借款団」構想といったものである。これらは、今後研究論文として公表していく予定である。以上、本年度は本テーマの研究を進める基本的な準備を整えることができたといえる。
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